地方の親の家をどうするか——施設入居や親の死去をきっかけに、突然この問題に直面する方は少なくありません。
「何から始めればいいかわからない」「遠くに住んでいて現地に行けない」——そんな不安を抱えている方のために、実家売却手続きを7つのステップで完全解説します。
こんな方におすすめ
- 親の施設入居・死去をきっかけに実家をどうするか悩んでいる
- 遠距離で実家の売却手続きができるか不安な方
- 兄弟と実家の売却について話し合いを控えている方
- 売却にかかる費用・税金の相場を知りたい方
この記事でわかること
- 実家売却の手続き7ステップ(査定〜確定申告まで)
- 売却にかかる費用・税金の目安
- 遠距離でも進められる具体的な方法
- よくあるトラブルと対処法
実家売却を始める前に確認する3つのこと
実家売却手続きに入る前に、以下の3点を必ず確認してください。見落とすと手続きが途中で止まる原因になります。
事前チェックリスト
- 実家の名義は誰か(親名義か、すでに相続済みか)
- 住宅ローン残債はあるか(売却代金で完済できるか)
- 相続人は何人いるか(兄弟全員の同意が必要)
① 実家の名義を確認する
不動産の売却は名義人本人しか行えません。親が存命の場合は親名義のまま売却できます。親が亡くなっている場合は、先に相続登記を済ませる必要があります(法務省の相続登記の申請義務化特設ページによると、2024年4月から相続登記の申請が義務化され、正当な理由なく違反すると10万円以下の過料が科される場合があります)。
ここに注意
認知症などで親の判断能力が低下している場合、通常の売却手続きはできません。「成年後見制度」の利用が必要になるため、早めに家族で対策を検討してください。
② 住宅ローン残債を確認する
ローンが残っている場合、売却代金で完済できるかを確認します。売却価格がローン残高を下回る場合(オーバーローン)は、別途資金が必要になります。金融機関に問い合わせて残高を確認しましょう。
③ 相続人全員の同意を取る
兄弟がいる場合、相続人全員の同意がないと売却できません。事前に家族間で合意を形成しておくことが大前提です。意見が割れた場合の対処法は後述します。
地域差にも注意する|地方ならではの確認事項
地方の実家には、都市部の不動産にはあまりない確認事項が存在することがあります。事前に把握しておくと、後の手続きで慌てずに済みます。
地方の実家でよくある確認事項
- 境界が未確定のまま長年経過している(測量が必要になる場合がある)
- 農地や山林が含まれている(農地法の許可が必要になるケースがある)
- 古い建物で建築確認書類が見つからない
- 近隣との慣習的な取り決め(水路・通路の使用など)が口頭でしか残っていない
こうした事項は現地の不動産会社や法務局に確認することで早期に把握できるため、査定依頼の段階で気になる点を伝えておくとスムーズです。
実家売却手続きの流れ|7つのステップ
実家売却手続きは、査定依頼から引渡しまで一般的に3〜6ヶ月かかります。全体の流れを把握してから進めることで、焦らず手続きを進められます。
step
1不動産査定を依頼する
最初のステップは「この家がいくらで売れるか」を把握することです。査定方法は2種類あります。
| 方法 | 特徴 | 遠距離向き |
|---|---|---|
| 一括査定サービス | 複数社にオンラインで同時依頼・無料 | ◎ |
| 個別訪問査定 | 精度が高いが現地訪問が必要 | △ |
ここがポイント
まず一括査定で相場を把握し、2〜3社に絞って詳細査定を依頼するのが効率的です。査定は無料で、受けても売却の義務はありません。
査定額の見方|複数社の数字をどう比較するか
一括査定では、会社ごとに数百万円単位で査定額が異なることがあります。最も高い金額だけで判断せず、根拠を確認することが重要です。
査定額を比較する際のチェックポイント
- 近隣の成約事例(実際に売れた価格)が示されているか
- 査定額の根拠(築年数・立地・接道状況など)が説明されているか
- 極端に高い査定額は「媒介契約を取るための提示」である可能性がある
- 担当者の対応スピード・説明の分かりやすさも合わせて確認する
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2不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定後、売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。契約には3種類あります。
| 契約の種類 | 依頼先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 報告義務あり・安心感が高い |
| 専任媒介 | 1社のみ | 自己発見取引も可能 |
| 一般媒介 | 複数社 | 広く買い手を探したい場合に |
遠距離の方へ
進捗報告義務がある専任または専属専任媒介がおすすめです。定期的に状況を報告してもらえるため、現地に行かなくても安心して任せられます。
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3売却活動・内覧対応
不動産会社がレインズ(不動産流通機構)に物件情報を登録し、買い手を探します。内覧の立ち会いは不動産会社が代行してくれますが、残置物(家具・荷物)がある場合は事前に片付けが必要です。
残置物の片付けに困ったら
遠距離で荷物の整理が難しい場合は、遺品整理業者に依頼する方法が有効です。見積もりは無料で対応している業者が多く、全国どこでも対応可能です。
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4売買契約を締結する
買い手が決まり価格交渉が成立したら売買契約を締結します。
ここに注意
契約前に「重要事項説明書」が交付されます。物件の瑕疵(欠陥)・権利関係・境界の確認事項などが記載されています。不明点は必ず担当者に質問してください。
遠距離の方へ
郵送またはオンライン電子契約に対応した不動産会社を選ぶと、現地への移動回数を減らせます。契約方法を事前に確認しましょう。
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5引渡し準備(残置物撤去・ライフライン解約)
売買契約後、引渡し日までに以下を完了します。
- 家財・残置物の撤去(遺品整理)
- 電気・ガス・水道の解約
- 郵便物の転送手続き
- 近隣への挨拶(任意だが丁寧)
ここがポイント
残置物の量が多い場合は早めに遺品整理業者に見積もり依頼することをおすすめします。引渡し直前に慌てることが最もよくあるトラブルの原因です。
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6決済・引渡し
売買代金の受け取りと同時に所有権移転登記を行います。通常は司法書士の立ち会いのもと、買主・売主・銀行が一堂に集まって進めます。
遠距離の方へ|委任状の活用
司法書士への委任状を活用することで、本人が現地に行かずに手続きを完了できます。委任状には実印と印鑑証明書が必要です。
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7確定申告(翌年2〜3月)
売却で利益が出た場合、翌年2〜3月に確定申告が必要です。以下の特例で節税できる可能性があります。
| 特例の種類 | 内容 |
|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 親が住んでいた家に適用できる場合が多い |
| 相続空き家の3,000万円特別控除 | 相続後3年以内の売却が条件 |
| 10年超所有軽減税率 | 長期保有物件の税率軽減 |
ここに注意
特例の適用条件を満たさないと、多額の税金が発生する場合があります。必ず税理士または不動産会社に事前確認してください。
実家売却にかかる費用・税金の相場
売却価格から差し引かれる主な費用をまとめました。事前に把握しておくことで、手取り金額の見当をつけることができます。各費用の詳細な内訳や節税特例については実家売却にかかる費用・税金の相場まとめで個別に解説しています。
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円(税別)が上限 |
| 印紙税 | 1,000円〜6万円(売却価格による) |
| 登録免許税 | 不動産評価額×0.4%(抵当権抹消時) |
| 司法書士費用 | 3〜10万円 |
| 遺品整理費用 | 10〜50万円(荷物量による) |
| 測量費用 | 30〜80万円(境界未確定の場合のみ) |
| 解体費用 | 100〜250万円(更地で売却する場合のみ) |
| 固定資産税の精算 | 引渡し日で日割り計算(数千円〜数万円) |
仲介手数料の計算例
3,000万円で売却した場合:
3,000万円×3%+6万円=96万円(税別)
手数料は売却代金から差し引かれるため、手出しは不要です。
古い家屋は「解体して売る」べきか「そのまま売る」べきか
築年数の古い実家は、建物を解体して更地として売却するか、そのまま「古家付き土地」として売却するかで迷うケースが多くあります。どちらが有利かは立地や建物の状態によって異なります。
| 売却方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| そのまま売却 | 解体費用がかからない | 買い手が見つかりにくい場合がある |
| 解体して更地で売却 | 買い手の選択肢が広がりやすい | 解体費用100〜250万円が先行して必要 |
ここがポイント
解体費用を先払いする余裕がない場合は、不動産会社に「古家付き土地」として現状のまま査定を依頼し、買主側の解体を前提とした価格交渉に進める方法もあります。判断に迷う場合は、解体前・解体後の両方の想定価格を不動産会社に確認しておくと比較しやすくなります。
遠距離から実家を売却する方法|離れて暮らす子世代の進め方
都市部に住みながら地方の実家を売却するケースは急増しています。遠距離でも対応できる3つの方法を紹介します。現地訪問を減らす具体的な手順は遠距離で実家を売却する方法でさらに詳しく解説しています。
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1不動産一括査定サービスを使う
一括査定サービスは、複数の不動産会社にオンラインで同時査定依頼できる無料ツールです。現地に行かずに相場を把握できるため、遠距離売却の第一歩として最適です。
- 一括査定で3〜5社の査定額を取得
- 査定額・対応の良さで2社に絞る
- オンライン面談で詳細を確認
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2委任状で手続きを代行する
本人が現地に行けない場合、委任状を作成して親族や司法書士に手続きを代行してもらえます。
委任状で代行できる主な手続き
- 売買契約の締結
- 決済・引渡し
- 相続登記
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3オンライン対応の不動産会社を選ぶ
電子契約・オンライン内覧に対応した不動産会社を選ぶことで、現地訪問を最小限にできます。会社選びの際に「遠方対応可・電子契約可」を確認しましょう。
実家売却でよくあるトラブルと対処法
トラブル① 兄弟間で意見が割れる
相続人の一人でも反対すると売却できません。同意の取り方や揉めやすいポイントについては兄弟で実家を売却するときの同意とトラブル対処法で詳しく解説しています。
対処法
早めに家族会議を開き、売却理由・売却益の分配方法を明確にする。話し合いが難航する場合は弁護士・司法書士への相談が有効です。
トラブル② 査定額が想定より低かった
築年数が古い・リフォームが必要な物件は査定額が低くなりがちです。
対処法
必ず複数社から査定を取ること。「仲介」と「買取」の両方の価格を比較することも有効です。買取は価格が低い代わりに早期に現金化できます。
トラブル③ 空き家のまま放置するリスク
ここに注意
2023年の法改正により、管理が不十分な空き家は「特定空き家」に指定され、固定資産税の軽減措置が解除(最大6倍)になるリスクがあります。また近隣へのトラブルや建物の急速な劣化も問題です。
「迷っている」段階でも、まず無料査定だけ受けることをおすすめします。査定を受けても売却の義務はありません。
トラブル④ 残置物・遺品の整理が間に合わない
引渡し日が決まった後に残置物の量を甘く見積もり、整理が間に合わないというケースもよく見られます。特に遠距離の場合、現地での作業時間が限られるため注意が必要です。
対処法
媒介契約を結んだ段階で遺品整理業者にも並行して見積もりを依頼しておくと、引渡し直前に慌てずに済みます。荷物量が多い実家ほど、業者の予約が取りやすい早い時期に依頼しておくことが重要です。
トラブル⑤ 仲介業者とのコミュニケーション不足
遠距離だと不動産会社からの連絡頻度が少なく、進捗が分からず不安になるという声もよく聞かれます。
対処法
契約前に報告の頻度・方法(電話・メール・チャットツールなど)を担当者と決めておきましょう。専属専任媒介・専任媒介であれば、法律上一定期間ごとの報告義務があるため、遠距離の方には特におすすめです。
実家売却におすすめの不動産一括査定サービス
実家売却手続きの第一歩として、不動産一括査定サービスを活用しましょう。以下はいずれも無料・オンライン完結で利用できます。
実家売却に関するよくある質問
Q. 親が存命中でも実家を売却できますか?
はい、できます。ただし名義が親の場合、親本人の署名・押印と実印・印鑑証明書が必要です。認知症で判断能力が低下している場合は「成年後見制度」を利用する必要があります。
Q. 相続前と相続後、どちらで売るべきですか?
相続後に売却する場合は先に相続登記が必要です。ただし相続後3年以内に売却すると「相続空き家の3,000万円特別控除」が使える場合があり、節税効果が大きくなることがあります。税理士に相談の上で判断してください。
Q. 遠方に住んでいても手続きはできますか?
はい、できます。実家売却手続きは一括査定がオンライン完結、契約・決済は委任状や電子契約で対応できます。現地への訪問は「残置物の確認・整理」の1〜2回程度に抑えることが可能です。
Q. 売却までにどのくらいの期間がかかりますか?
一般的に3〜6ヶ月が目安です。地方の物件は都市部より時間がかかる傾向があります。築年数が古い・立地が不便な物件は1年以上かかるケースもあります。
Q. 空き家のまま賃貸として活用することはできますか?
地方の物件は賃貸需要が低いことが多く、入居者が見つからないリスクがあります。また管理コスト・修繕費もかかるため、長期的に見ると売却の方が合理的なケースが多いです。
Q. 解体してから売却した方がいいですか?
一概には言えません。解体費用(100〜250万円程度)を先行して負担できるか、そのまま売却して買主側の解体を前提に交渉するかで結果が変わります。不動産会社に解体前・解体後それぞれの想定価格を確認し、比較した上で判断することをおすすめします。
Q. 査定額が不動産会社によって大きく異なるのはなぜですか?
査定方法や重視するポイントが会社によって異なるためです。極端に高い査定額は、媒介契約を獲得するための提示である可能性があります。近隣の成約事例など根拠が明確な査定額を基準に、複数社を比較して判断しましょう。
まとめ|実家売却手続きは早めの査定と家族合意から始めよう
実家売却の流れ まとめ
- 名義・相続人・ローン残債・地域特有の事情(境界・農地など)を確認する
- 不動産一括査定(無料)で相場を把握し、複数社の査定額を比較する
- 媒介契約を結んで売却活動を開始する(遠距離なら専任媒介がおすすめ)
- 解体の有無・残置物の整理方針を早めに決めておく
- 売買契約・引渡し(委任状・電子契約を活用)を行う
- 翌年の確定申告で特例の適用可否を確認する
遠距離でも、一括査定サービスと委任状を活用することで現地への移動を最小限に抑えながら実家売却手続きを進めることができます。
「売るかどうかまだ決めていない」という段階でも、まず無料査定を受けることが最初の一歩です。相場を知ることで、最善の選択肢が見えてきます。